さて、前回の記事から9ヶ月も経ちました。 これは次に書く記事は滞在許可証(Permesso di Soggiorno)について書こうと決めていたのに、滞在許可証を手に入れるのに時間がかかったためです。 私が、滞在許可証のカードを手に入れたのは 2022 年 9 月 9 日で、申請してから発行まで実に1年近くかかっています。 今回は、私が去年および今年滞在許可証を新規申請・更新するために必要だった手続きについて書きたいと思います。
滞在許可証の申請方法に関しては、日本語、英語、イタリア語を問わずそれなりにインターネット上に情報があります。 なので、私がわざわざ新たに記事を書く必要もないのかもしれませんが、情報は多いにこしたことはないと思うので自身の経験について述べたいと思います。 仕事や研究のためにイタリアに来た人の体験談というのは少ないので一定程度の価値はあると考えています。 インターネット上にある情報は学生、もしくはイタリア人と結婚した人の体験談が多いです。 とはいうものの、職種などが違ってもやるべきことはだいたい一緒です。 また、やるべきことはイタリア全国で同じですが、滞在許可証が発行されるスピートなどは県によって大きく異なるという印象を私は持っています。
滞在許可証を手に入れるための手順は大まかに以下のとおりです:
- 到着時してから8日以内1に kit という封筒を郵便局から警察署に送る
- 指定された日時に警察の移民局に行き指紋採取などをする
- 滞在許可証(カード)が出来上がり次第警察署に受け取りにいく
1の手続きが最も重要かつ少々大変なだけで、2、3は時間通りに指定された場所に行くだけです。 更新のときもやるべきことは一緒です。 (更新の申請は古い滞在許可証の有効期限の 60 日前から可能です)
では、一番重要な kit の準備について説明をします。 kit というのは、個人情報(氏名、住所、連絡先、パスポート情報など)を記載するための書類が内封された封筒のことです。 この封筒にさらに
- 労働許可証(nulla osta)
- Convenzione di Accoglienza(内定書)か仕事の契約書
- Codice Fiscale(税番号)を証明するもの2
- パスポートのコピー
- 古い滞在許可証のコピー(更新の場合のみ)
- 宿泊先を証明する書類(賃貸契約書や convenzione di ospitalità)
- 滞在期間をカバーする保険に入っていることを証明する書類
のコピーを入れて警察署に送ります。 学生の場合は、上2つの書類が入学許可証や在籍証明書などに変わるはずです。 Kit はどの郵便局(Poste Italiane)で手に入りますし、Kit はどの郵便局からでも送れます。
私は kit を郵便局に貰いに行ったことも、自分の情報を記入する書類を自分で記入したこともありません。 これは、初年度は Kit を提出する前に警察署に行く必要があり、そこで身元確認などをしているうちに kit も作成してもらったからです。3 おそらく、仕事や研究が理由でイタリアに入国した場合は警察署に行く必要があるのだと思います。 学生の人はこのステップがないみたいです。 学生であってもpatronato という市民の法的手続きを手助けしてくれる機関に行けば kit をくれますし、kit に記入すべき個人情報などを一緒に記入してくれます。 彼らは、このような手続きを何度もしているのでその道のプロです。 また、少なくとも Bologna では patronato の職員は英語を多少喋れます。4 ですので、patronato を使うことを強くおすすめします。 Patronato がどこにあるかや、どうやって予約を取るかなどは大学の事務の人が教えてくれると思います。 私は2年目は patronato に行き kit の準備をしました。
Kit に入れる書類の中で準備が大変なのはおそらく宿泊先に関する書類や保険の書類です。 宿泊先に関しては、イタリアについた当初にホテルや AirBnB に止まっているのであれば、そこの住所で準備をします。 すでに、アパートの契約がある場合はアパートの住所で準備をします。 1年目は仮に8日以内にアパートを契約したとしても、契約したことの登録が間に合わないと思うので、convenzione di ospitalita という書類を準備することが多いと思います。 これは、「この外国人を私は受け入れますよ」ということを証明する書類で、大屋さんが警察署に送るものです。 Kit にはこの書類のコピーとこの書類を警察署に送ったことの証明(郵便局からもらう控えのコピー)を入れる必要がありました。 いずれにせよ、大屋さんはこの手の書類の準備に慣れていないので、こちらから積極的に働きかけないと書類を準備してくれません。 また、滞在許可証の申請中に住所が変わった場合は、後日追加で書類を警察署に送る必要があります。
保険に関する書類は海外旅行・長期滞在保険の書類もしくはイタリアの国民健康保険 SSN (Servizio sanitario nazionale)への加入を証明する書類が必要です。 私は、大学との契約に SSN への加入が含まれていたので、SSN に加入しその書類を準備しました。 しかし、ここで一つ問題が生じます。 SSN の加入には滞在許可証が必要なのです。 つまり、SSN と滞在許可証の発行は相互に依存する関係にあるのです。5 これを私がどう解決したかというと、まず CUP という場所で SSN の支払いを済ませその支払い証明書のコピーを kit に入れ郵便局で kit を送り、その後 kit を送った証明を持って CUP にもどり SSN の手続きを完了させるということをしました。 どうやら、これはよくあるシナリオのようなのですが、CUP の職員でも人によってこういう問題が起きること、またその解決方法を知らないので、1年目はなかなかどう解決すればいいのかがわかりませんでした。
滞在許可証の申請にはだいたい 100Euro ぐらいのお金がかかります。 内訳としては、
- kit の送料が約 30Euro
- 申請費が約 70 Euro
- Marca da bollo という切手が 16Euro
上2つは郵便局から kit を 送るときにかかります。 Marca da bollo は予め tabacchi(タバコ屋)で買って郵便局に持っていく必要があります。 私は、大学が費用を支払ってくれましたが、学生などは自費で申請をしているようです。 安くはないので、お金は準備しておきましょう。
以上のものがすべて用意できたら、あとは郵便局に行き kit を提出するだけです。 このとき、指紋採取のために警察署に行く予約が自動的に取られます。 日時は選べません。 また、同時にricevuta(直訳はレシート)を貰いますが、これが滞在許可証を申請中であることを証明する書類になります。 これで、kit に関する手続きは終了です。
Kit を準備する上でのアドバイスを一つするとしたら、すべてを自力でやるのは避け人に頼りましょうということです。 あなたが仮にイタリア語を日本ですでに学んでいて C2 レベルだとしてもイタリアでの事務手続きには慣れていないと思います。 ネイティブの手伝ってくれる人を見つけるのがあなたがまずやるべきことです。 それは、友達でもいいですし、大学などの事務員でもよいと思います。
Kit を送付後は警察署に2度行くだけですが、この間かなり長いこと待たされます。 私は、1年目は 10 月 6 日に kit を提出したのにも関わらず指紋を採取したのは翌年の 3 月 25 日です。 また、指紋を採取してからは 2 ヶ月くらいでカードが準備できると言われているのにも関わらず、カードを受け取ったのは 9 月 9 日です。6 しかも、Bologna の場合はカードの準備ができているかはこちらからサイトへ行き確認しなければならないので、私は半年間の間数日置きにサイトを確認するということをし続けていました。 他の県だと SMS で通知してくれるところなどもあるそうです。 県によっても発行のスピードはかなり違うようですが、1年近く待たされるのは特段珍しいことではないみたいです。 ただ、今年は私は運が良かったのか 9 月 21 日に kit を提出したら、10 月 20 日の予約をもらえました。 手続きのスピードが改善されたのかはわかりません。 多くの留学生が 9 月から 10 月にかけて kit の手続きを済ませるので、彼らより若干早くできたから待たなくてすんだ可能性もありそうです。
「そんなに長い間滞在許可証がなくて困らないのか?」と問われれば、「困ります。」というのが答えになります。 どういう点で困るかというと主に以下の 2 点です。
- イタリア国外に出づらくなる
- 滞在許可証がないとできない事務手続きができない
一つ目の点についてのより正確な言い方は「イタリア以外のシェンゲン協定内の国に行きにくくなる(トランジットを含む)」です。 Ricevuta というただの紙切れを公的なものだと認めてくれる国はないので、シェンゲン協定国内に行くと EU に不法滞在しているものとみなされてしまいます。 滞在 1 年目でまだビザが切れていない場合は滞在許可証がなくても EU 内を自由に移動できます。 注意が必要なのはビザが切れてからです。 特に注意が必要なのは日本に一時帰国した際に EU に入る際で、イタリア以外の国で入国検査を受け問題に巻き込まれたという体験談はインターネット上などでよく見かけます。 できるだけ、飛行機は直行便や中東乗り換えなどを取るようにしたほうが良いでしょう。 2 点目については、例えば住民登録などが滞在許可証がないとできないです(州や県によるかもしれません)。 住民票がないとできない手続きなどもある(例えば、carta d’identitàという身分証明書の発行や免許証の切り替え)ので、滞在許可証がないことは結構なボトルネックです。 ただ、イタリアでのんびり暮らしているだけであれば多少不便かもしれませんが、ricevuta さえあれば問題なく生活できます。
さて、今年の滞在許可証はいつもらえるのでしょうか? あまり期待せず気長がに待つことにします。
実際には多少遅れたとしても問題はないと思います。私の知り合いには遅れて提出した人が何人もいますが、一人として問題にはなっていません。1ヶ月以上遅れて kit を提出した人もいます。↩
Nulla osta, Convenzione di Accoglienza, Codice Fiscale については前回の記事に書きました。↩
この警察署へ行くための予約が中々とれず、着いていきなり苦労しました。何度も、リマインダを送ってようやく返信が予約が取れました。↩
しかし、こちらが少しイタリア語を理解していることを悟るやいなや全部イタリア語で話しかけてきました…↩
我々コンピュータ科学系の人間はイタリアではよくデッドロックが起きると冗談を言っています。↩
私の友人の中にはカードを受け取ったらすでに有効期限切れだったという人もいます。↩